AIの画像生成人気ですよね。特にStablity AIのStable Diffusionの勢いがすごいです。
意外と2022年の8月からあってマニアの間で盛り上がっていたのですが、ChatGPTの人気に押されて再熱している感じです。
さて、今日はそんなAI画像生成の著作権にフォーカスしてみましょう。
よくわからないので、文化庁に電話してみた
色々な記事がありますが、みなさん独自見解でよく分かりません。著作権のことは文化庁に聞くのが間違いないでしょう。
一応、文化庁の公式見解のスライドがあります。詳しく知りたい方はこちらを参照ください。
ということで、実際に文化庁に電話で聞いてみました!
結果は…
「使用するモデルが商用利用可能ならOKです」
とのこと!!
これは安心ですね。とりあえず、AIが生成した画像は全部ダメみたいなことにはなっていなさそうです。でも、ここで疑問が残ります。
はい、当然気になりますよね。もしこれが許容されれば、クリエーターさんにとってはとんでもない悲劇です。
当然ですが、商用利用可能なモデルであっても、著作権に抵触する画像はダメ!!なのです。
つまり、どういうことかというと、人が作ろうがAIが作ろうが、出力する結果次第ということです。
この図がめちゃくちゃ分かりやすいですよね。ここからじゃあ、同人誌はどうなんだ?という話をしだすとややこしくなってくるので一旦置いておきましょう。
そもそも画像をAI学習する時点でダメでは?という意見
クリエーターさんの中には、画像生成AI自体、前提として人が撮ったり書いた絵から学習しているのだから、それ自体が許されないと考える方もおられるでしょう。
事実、勝手に人の絵を学習させて、そのモデルを勝手に公開したり売ったりしている人がいます。
画像生成AIで一括りにするとややこしくなるので、ここで一旦まとめておきましょう。(DALL·E 2など別の画像生成AIの話は一旦置いておきます。そもそも一番治安が悪いのがStable Diffusion関係なので笑)
Stable Diffusion | 全てのベース。LAION-5Bという200TBを超える研究用の画像データから学習している。 |
追加学習モデル | 色んな人が、それぞれ画像を学習させている。著作物を勝手に学習させて使っている悪い人もいれば、フリー素材でちゃんとモデルを作っている人が混在している。 |
つまり、とりあえず共通認識として、ベースの「Stable Diffusion」は問題ないとされている。ということです。
物議を醸しているのは追加学習モデルの方です。
これ…実は…
OKでもあり、NGでもあるんです。ちょっと文化庁のスライドを見てみましょう。
AI開発のような情報解析等において、著作物に表現された 思想又は感情の享受を目的としない利用行為は 、 原則として著作権者の許諾なく利用することが可能
ただし、「必要と認められる限度」を超える場合や「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は、この規定の対象とはならない。
つまり、「学習すること自体は基本的にOKではあるけど、著作権者の利益を害するならダメ」という当たり前のことが書いています。
結局このスライドに立ち戻るのです。学習する時点においては基本的に著作物を使用することすらOK。ただし、それによって著作者の利益を害すならだめ。ということは、要するにそのモデルを勝手に公開したり、生成した画像が著作物と類似していることが問題なんですよね。
でも、ここでクリエーターさんはしっくりこないはずです。
大量に生成され続けるAI画像を個別で精査しないとダメなのか!という当然のお怒りの声
今までは、人が人の著作物をパクる数にも限界がありました。著作物をそのままコピーするのは当然一瞬で分かるし、トレースでさえもある程度有名になればユーザーが気づいてしまいます。だからこそ、気づかれないようにパクることにも時間がかかっていたのです。
要するに違反人口自体が少なく、個別で注意したり、裁判を起こすことでなんとか対応はできていました。
しかし、AIにより無尽蔵に生成される画像はどうでしょうか?
人の何百倍の速さで生成する画像、モデルを公開すれば誰でも使えてしまう画像生成AI、著作権違反だと気づかず悪気なく使ってしまう人…
これら全てを注意して裁判することなんて不可能です。だからこそクリエーターさんとしては、画像生成AI自体を一刻も早く法で規制して欲しいというご意見が出るのはもっともだと思います。
ただ、結局のところ、イタチごっこになってしまう…気がするんですよね。それが画像生成AIによって作られたものかどうかの判断ができないからです。
やはり私は、法でAIを規制するのは不可能、だと思います。インターネットの規制さえ出来ていない法に、AIの正確で全体の利益を守れる法なんて作れないと思います。
しかし、私は決してクリエーターが滅びる運命だとは思っていません。私自身もエンジニアであり、デザイナーなので、独自創作の大変さも理解しているつもりです。
だからこそ…
AIはAIで規制すべきである
そもそもなぜAIを法で規制しようとするのでしょうか?
圧倒的なスピードで進化し24時間働くAIに、人が追いつけないね、ということは共通の理解のはずなのに、AIの規制の話になると人が規制する前提になってしまっています。
AIがAIによって規制されることでほとんどの問題が解決できるように思います。
私が最善策だと考えているのは、
です。
著作者はここに自分の作品を登録し、AIがその特徴をデータベースに記憶する。そして画像がどこかで使用されるときにAIがチェックし、著作権の判断をする。
これにより、著作者は悪質な盗作魔に目を光らせることなく自分の創作に集中することができます。AIの著作物の問題だけでなく、既存の著作権違反の問題さえも解決することも出来てしまうのです。
使う側も気づかずに著作権違反をしてしまうというリスクを気にせずビジネスをすることができるのです。
欲を言えば、法とこの著作権管理AIがリンクしても良いのではないかと思います。法は紙の上にある文字だけではなく、AIというプログラムであってもいいはずです。
と、まあ壮大な夢のような話に思われるかも知れませんが、今後画像生成AIに限らずこういったAIに関する問題はたくさん出てくるはずです。それを人ではなくAIで規制するという視点は大事だと思います。
ただ、著作権管理AIの実現には課題が山積み
とはいえ楽観的な視点ばかりでは何も実現できません。
そもそも何を基準に類似しているのかのアルゴリズムの規定が必要です。
誰がその基準を作るのかという問題はあります。明らかに似ている画像をパスしても問題ですし、規制しすぎて何もかもが著作権違反認定されてもダメでしょう。
著作者が全員善者とは限りません。人の作品を勝手に持ってきて先にシステムに登録してしまう人もいるでしょう。本当にその作品の制作者かをチェックする必要もあります。
また、誰が管理し運営するかも問題です。
世界中ならばそういった独自機構が必要でしょうし、国単位で実現させるなら国の運営力も必要になります。
技術的な視点でいうと、”使用時”とは一体何を指すのか、全てAIで適用できるのかも課題です。例えばネットに公開されている画像全てを精査するには大量のトラフィックを必要としますし、実店舗などインターネットの目が届かないところに置かれては対応できません。
と、まあ課題を挙げたらキリがないのですが、何事もまずはスモールスタートで始めるのが良いと思います。
例えば、類似の基準はクリエーターを大量の人が学習に参加し、類似性の検証をすることで民主制も質が担保されるはずです。
著作物の申請は本当は全てAIで完結できたらいいのですが、既存の商標権などの仕組みを利用するのがいいかと思います。
運営は、クリエーターとAIに携わる双方の独自機構が良いのではないでしょうか。国からの支援も必須です。
“使用時”のチェックに関しては、とりあえずはそれを見たユーザー各々の通報制にすることである程度問題を解決できると思います。
(通報者には罰金の一部がもらえるとか面白いですね。そうすることで使用者も使用前にチェックすうようになります。)
とまあ、かなり夢物語ですが、少し実現性を帯びてきたのではないでしょうか?
いずれにせよクリエーターと画像生成AIが共存できる未来になってくれたら嬉しいですね。